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2011年5月21日 (土)

福島県外の農地の土壌放射能地図

先日の福島県下の農地の土壌放射能地図に引き続き、福島県外の農地の土壌放射線地図を描いてみました。
(こちら)

5月15日現在で都県ホームページにデータが公開されていることを確認できた、東北2県(山形、宮城)と東京都を除く関東6県(茨城、群馬、栃木、埼玉、千葉、神奈川)のデータをプロットしました。その後5月20日に存在を確認した北海道のデータ(4月と5月の2回測定)も参考として追加してあります。県名をクリックすると元データにジャンプします。
北海道:4月28日公表分7カ所(いずれも農業試験場内、所在地はこちら
北海道:5月16日公開分7カ所(同地点の再測定)
山形県:5月6日公表分6カ所
宮城県:4月8日公表分14カ所
茨城県:4月8日公表分18カ所
群馬県:4月8日公表分8カ所
栃木県:4月8日公表分14カ所
埼玉県:4月8日公表分4カ所
千葉県:4月8日公表分10カ所
神奈川県:4月8日公表分5カ所(いずれも県立の農業研究施設内、所在地はこちら

茨城県は測定地点を表示した 地図を公開しているものの、所在地は市町村名までしか公開していません。従って今回作成した地図上の測定点の位置は実態とは必ずしも合っていない可能性があります。
新潟県からは5地点の測定値が報告されているものの、測定地点が「上越」 「中越」「下越」としか記載されていないため地図化を断念せざるを得ませんでした.

図の縦軸は福島と同じく、地表から15 5 cmまでの表層土中の放射性セシウム量(Cs-134とCs-137の合計)で、単位はBq/kg(乾燥重量当たり)ですが、測定値は福島県内とくらべてずっと低く、2000 Bq/kg以上はありませんでした。従って、イネの作付け制限基準5000 Bq/kgを超える測定点はありません。

[2011.8.27追記]
農林水産省の指示で行われた農地の土壌放射線調査では、文部科学省の調査と異なり1 kgの土壌試料を深さ5 cmではなく15 cmまで掘って採取していたことを下記資料(Q58の回答)により確認しましたので、地図の説明を訂正しました。
「がんばろうふくしま!」農業技術情報(第2号)原子力災害に関する農作物の技術対策Q&A

注:北海道では半減期が約2年とCs-137より短いCs-134を測っておらず、代わりにヨウ素131(半減期約8日)を測定して7カ所とも不検出。北海道だけが過去3年間(平成19年〜平成21年すなわち2007-2009年)の農地土壌(札幌市と江別市)のCs-137測定値の範囲を14-19 Bq/kgと報告。平常時の日本の農地土壌中のCs-137量の目安はこの程度と考えてよいでしょう。今回報告された測定値はいずれもこれを下回りましたが、これはおそらく雪解けからまだ間もないため、大気中から落下する放射性物質が地表にあまりたまっていないからと考えられます。

福島県浜通りと中通りの北端に位置する相馬市、伊達市に隣接している宮城県南東部、また福島県中通り南部に隣接する栃木県北部の測定値が高いのが目立ちます。また関東地方でも、平野の端の山麓近くや山腹で値が大きくなっている傾向が見て取れます。Google Mapsの表示を「地図」から「地形」に切り替えると地形との関係がとてもよくわかります。

福島県下の農地の土壌放射能地図を描いたとき、イネの作付け制限基準の決め方を参考にしてホウレンソウの作付け制限基準をイネの10倍厳しい500 Bq/kgと想定しました(ホウレンソウは葉もの野菜の中でもセシウムを特に吸収しやすいとされています)。
(2011年5月24日訂正:当初カッコ内には「ホウレンソウはアブラナ科の葉もの野菜の中でもセシウムを特に吸収しやすい」と書きましたが、実際にはアカザ科ですのでこれは事実に反する記述でした。コメントでご指摘くださったMokichiさん、どうも有難うございました。お詫びして訂正させていただきます。なおアブラナ科の野菜は葉を食べる葉もの、花を食べる花野菜ともセシウムを吸収しやすい作物として知られています)
注:この作付け制限基準はあくまで現行の食品中の放射性物質の暫定規制値(水と原乳を除く固体食品の場合放射性ヨウ素2000 Bq/kg、放射性セシウム500 Bq/kg)を前提として決めたもので、たとえば子ども用には規制値を1/10の50 Bq/kgに引き下げることにすると、対応する作付け制限基準も大人用の1/10の50 Bq/kgということになります。

福島県以外でホウレンソウを始めとする葉もの野菜の出荷制限が早くからかかっていた地域(食品流通構造改善促進機構の「食品の放射能検査データ」 のページで調べられます)を見てみると、実際には
茨城県北茨城市:308 Bq/kg
茨城県日立大宮市:92 Bq/kg
栃木県上三川町:275 Bq/kg
栃木県宇都宮市:115 Bq/kg
群馬県伊勢崎市:109 Bq/kg
千葉県旭市:70 Bq/kg
など土壌中のセシウム量が案外少ないところが結構多いことがわかります。ピンの頭に黒点を入れてあるのが、5月20日現在で暫定規制値超えの農産物(野菜、茶の生葉と原乳)が検出されたことのある地域内の測定点です。
もっとも、福島県外の測定点の密度は福島県下と比べて圧倒的に低く、また規制値越えの植物と生えていた土壌を同時に採取して測定値を比較対照しているわけではないことを考えると、想定した作付け制限基準と農産物の実測結果との対応がもう1つという感じがするのはしかたがありません。同じ自治体内でも測定点の場所が違えば測定値は変化します。特に北関東と宮城県南部でよりきめ細かな土壌放射線調査が必要でしょう。

なお、農地の土壌放射線地図は農家だけに関係があるものではありません。
3月22日時点で原子力安全委員会は、福島原発から20-30 km圏内の屋内退避指示区域内と区域外でも農産物の出荷制限がかかった地域(こちらで確認できます)では、家庭菜園の葉もの野菜を食べないよう呼びかけていましたが(詳しくはこの記事)、小金井市在住の方が茨城県下の自家菜園で収穫したブロッコリー(アブラナ科の花野菜)を市民団体「小金井市放射能測定器運営連絡協議会」が4月8日に検査したところ、暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されていたことが5月12日付けで公表されました(情報源のツイート検査結果)。実もの野菜や根菜は土壌からの放射性セシウムの移行係数(土壌中の放射性セシウム量に対する作物中の放射性セシウム量の割合)がアブラナ科の葉もの野菜よりほぼ1ケタ小さく、この結果葉もの野菜よりは影響を受けにくいことがわかっていますが、油断は禁物です。首都圏で現在家庭菜園をお持ちの方、学校や幼稚園で運営する菜園や自治体の市民農園の担当者の方はご注意ください。とくに学校農園や市民農園の担当者の方はぜひ収穫した野菜か菜園の土壌のどちらかを一度放射線検査に出し、放射性セシウムの量を確認されることをおすすめします。

それにしても東京都は土壌の検査もせず、4月末に農林水産省から要請のあった牧草の放射線検査の結果も青梅市1カ所(5月19日公表、放射性ヨウ素、放射性セシウムとも不検出)しか報告していないとはどういうことでしょう?東京都内に農地は存在しないのでしょうか?

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コメント

力作,どうもありがとうございます。出展元や注意点まで書かれているので解りやすいかと思います。
一点,本文中に「ホウレンソウはアブラナ科の葉もの野菜の中でもセシウムを特に吸収しやすい」とありますが,ほうれん草はアカザ科でアブラナ科ではありません。おそらく,「葉もの野菜の中で・・・」という意味だと思いますが,誤解を招きかねないので出来ましたら修正して頂いた方が良いかも知れません。

投稿: Mokichi | 2011年5月23日 (月) 06:47

作成ありがとうございます。
こうした見やすい情報整理は本当にありがたいです。

それにしてもホットスポットといわれる茨城南部から千葉県柏我孫子松戸周辺エリアがまるまるすっぽりデータが無いのがいたいですよね。
ニュースに出ないので大丈夫なんだと思っている人が多いので、小中学校もなにも対策していません。
一刻も早い農地や校庭の計測がのぞまれます。

投稿: Bの妹 | 2011年5月23日 (月) 07:36

Mokichiさん
コメントどうも有難うございます。確かにホウレンソウはアカザ科でしたね。うっかりしていました。早速修正させていただきます。

Bの妹さん
福島県とその周辺の放射線測定値(大気中の放射性物質の量を表す空間線量率の値)は@nnistarさんがこの地図にまとめてくださっていますので、ぜひ一度ご覧下さい。
http://www.nnistar.com/gmap/fukushima.html
またつくばから柏周辺の放射線測定結果をまとめた地図としては、次のようなものもあります(筑波の高エネルギー研の方が個人で測定)。
http://geigerdata2.appspot.com/plotter?id=agtnZWlnZXJkYXRhMnIaCxITZ2VpZ2VyZGF0YV9wbG90dGVyMhjZNgw

5月中旬から茨城と栃木で自治体による測定が始まっており、市町村単位でデータがネット上に公表されるたびに@nnistarさんの地図上に追加されています。学校、市街地などで測定が始まることが決まりましたら、@nnistarさんまでご一報いただければ幸いです。農地も会津坂下町や会津美里町のように市町村単位の独自測定を行っておられるところがあるようでしたら、当方までぜひご連絡ください。順次書き加えていきたいと存じます。市町村レベルの測定の情報は県レベルのホームページではなかなか把握しきれず、地元在住の方からの情報が頼りですので、よろしくお願いいたします。

投稿: nao | 2011年5月24日 (火) 23:48

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